【書評】スティーヴン・W・ホーキング『ホーキング 宇宙の始まりと終わり』
スティーヴン・W・ホーキング『ホーキング 宇宙の始まりと終わり』については、最近自分のビジネスに関する本やマーケティング関係の本にどっぷりだったのを反省して、息抜きと知的好奇心を満たす目的で読んでみたものです。
| ホーキング宇宙の始まりと終わり―私たちの未来 |
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スティーブン・W. ホーキング Stephen W. Hawking
青志社 2008-09 |
①古い本の翻訳であることを念頭に
ただ、この本に興味のある人に最初に言っておかなければならないのは、この本はホーキングが1993年にケンブリッジ大学で行った講義を収録したものを、1996年に刊行し、それを2008年になって出版したという点です。つまり、相当なタイムラグがあるわけです。
進歩の早い物理学界ですから、この本の内容が多少古くなっている面はあるでしょう。しかし、これまでの理論の変遷を、わかりやすく示してくれているので、最先端に触れたいというわけでないのなら、十分に価値のある本だと思います。
②わかりやすさを追求する数々の表現
たとえば、p.100では、ブラックホールの事象の地平の説明として、
「すなわち事象の地平は、あと一息のところでブラックホールから脱出しそこなった光でできているということです。警官から逃げようと一歩先を走ってはいるものの、完全には逃げ切れずにいる状態に少し似ています。」
という説明がなされています。わかりやすいでしょう?
③物理学者という職業
物理学の世界では、ちょっと前まで当たり前だと思われていたことが、ひとつの矛盾の発見によって、覆されてしまうといったことがよくあるそうです。また、大学院生が、それまでの知見を凌駕するような知見に至ることもあるそうです。もちろん、一生そういったダイナミズムと関わらずに生涯を終える物理学者も多数です。
そういった機微についても、ホーキングは触れています。たとえば、p.96では、
「わたしはカリフォルニア工科大学のキップ・ソーンを相手に、はくちょう座X-1はブラックホールを含まないというほうに賭けをしました。これはわたしなりのある種の保険です。わたしはブラックホールについて多くの研究をしてきましたから、ブラックホールが存在しないと判明するとすべてが水の泡になってしまいます。」
と話しています。おもしろいですよね。
このように、宇宙に関する基礎の知識も手に入り、ホーキング独特の語り口も楽しめて、読む価値がある本だとおもいました。類書にも手を出してみようと思っています。

